古来より、カミガミは序列に拘る存在だった。
ヒトが食物を生きる糧とするように、カミは歴史(いわれ)を糧とする。
歴史(いわれ)がなければ――
誰しもが認め、誰しもに識られる存在であらなければ、
カミは忽ち力を失い、いずれ、消え去る。
敬愛、畏怖、念い(ねがい)の形は様々だけれど、他者が紡ぐ念いこそが、カミをカミとして存在させる唯一にして絶対のパラメーターだった。
長い年月をかけて、脈々と連なり紡がれていく他者からの念い、そうして積み重なった歴史。
カミガミは自らが糧とするそれのことを「イワレ」と呼んだ。
カミガミは、己をより名高き存在へと高めることで、より多くのイワレを、糧を得ようとした。
己が、消えてなくならないために。生きるために。
この仮初のセカイにおいて、「カミ」は決して永続化された存在ではない。
カミにとって、「承認」こそ即ち、「生存」なのである。
だからこそカミガミは、己が存在をセカイに識らしめるため、互いのチカラをクラベあう。
自らが、とるに足らない存在ではないことを、謳われるに足る存在であることを、
このセカイに、証明するために。
だから……古来より、カミガミは序列に拘る存在だった。
気も遠くなるほど昔から、絶えることなく続いてきた、チカラクラベ(序列を決める戦い)。
そして今日も、ある二柱のカミが、古の戦場で、覇を競う。